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【証券アナリストが解説!】コロナショックと外国為替(FX)の変動

FXコロナアナリスト分析

2月あたりから表し始めたコロナウィルスが3月には世界の金融市場を大混乱に陥らせています。

現在では各国が金融政策景気刺激策を打ちながらも感染者がいつ減少するのかまでは全く見えていない状況です。

経済対策も世界的にはリーマンショックを超える規模の金額を投じることになりそうな環境であり、これはリーマンショック以来の大きなイベントと言えるでしょう。

ここではコロナショックがどのように世界経済に影響を及ぼしており、そのプライスアクションにどのような意味があるのか?を考えて行きたいと思います。

今回のゼロはじMarketGuide専門家

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証券アナリスト・中島翔

プロフィール

証券アナリスト・中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。

その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。

その後は、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。

さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。

仮想通貨トレードに関しても、仮想通貨取引所コインチェックにて、トレーディング業務に従事した経験を持ち、金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 金融業界に精通して幅広い知識を持つ。

【保有資格】証券アナリスト

コロナショックと外国為替の変動

コロナショックと外国為替の変動

コロナショックによる影響

まず今回のコロナショックによってどのアセットクラスがどのように影響を受けたのかを解説していきたいと思います。

下記のチャート共に代表的なアセットクラスの動きをチェックしましょう。

FXマーケットガイド概況

まず緑色:USDJPY、オレンジ色:S&P株価指数、紫色:米国債10年金利、青色:WTI原油を表しています。

一番下落率が大きかったのはWTI原油の動きで昨年10月対比で見ると、3月手前から50%以上下落していました。

S&P株価指数は20%程度の下落を見せています。

米国債10年金利はリスクオフから一時大幅に金利低下するも、その後一時金利が反転上昇する動きも見せていました。

そしてドル円は4%超円高ドル安に向かっていましたが、その後大きく反発し下にいってこいの動きとなっています。

ここでのポイントは2点です。

1.なぜ米国債金利は一時上昇したのか

最初のポイントは「株が急落する中の金利上昇の謎」です。

通常リスクオフの場合金利は低下し米国債金利は買われる動きを見せるはずですが、この時は一時米国債も売られていました。

この理由は、ある程度の景気後退の織り込みの場合は株が売られた資金が逃避する形で債券市場に向かうことにあります。

余談ですが、投資信託等のバランス型のファンドは債券を7割、株を3割いれてバランスを取っている理由はこのような理由からです。

しかしあまりにも金融市場がクラッシュした場合、何も保有せず現金に全て変えて安全性を高めておきたいというセンチメントに投資家は陥ってしまいます。

これは究極のリスク回避の選択から生まれたものです。

 

またもう一点の理由は、米ドルというのは世界の基軸通貨であり、世界の様々な貿易や債券発行時の基軸通貨として利用されているからです。

そのため金融市場がクラッシュするときに世界で逼迫するのが米ドルであり、米ドルが調達できない状況に陥る可能性があることから、ドルの需要が一時的に高まります。

そのため米国債を保有している投資家が米ドルが必要になったため米国債を売却して米ドルを調達するという行動に走ります。

この2点がこの金利上昇の背景です。

2.ドル円はなぜ急反発したのか

次のポイントはドル円の動きです。

一時株価が急落しリスク回避の動きが鮮明になる中、ドル円も円買い圧力が強まり下落するも、結局反転上昇し下落分を取り戻す展開となりました。

しかし反転上昇する中でもリスク回避の動きは継続しており、ドル円だけ不思議な動きをしていると感じる投資家も多かったのではないでしょうか?

この理由として先ほどの「ドル需要の高まり」が背景にあります。

この時ドルインデックスを見ても相当ドルの需要が高かったことが見て取れます。

ドル円とドルインデックスのチャートは下記の通りです。

FXマーケットガイドアセットクラス

ドル円が一度下落するも大幅反発したタイミングでドルインデックスが急上昇していることから、このようにドルの需要の高まりがドル円の上昇に寄与したことが見て取れます。

上記でご紹介した2点がコロナショックでの大きなポイントになります。

投資家のリスク許容度が通常のリスク回避の範囲を超えてしまい、「cash is king(現金が王様)」のセンチメントまで追い込まれ、売れるものは売るという状況が継続していました。

なかなかこのような状況にはならないため投資家としてはいい勉強材料と言えるでしょう。

「投資家の現金化の動きの動きが加速している」というところが大きなポイントになります。

では次に各通貨ペアの動きについて見てみましょう。

コロナショックにおける各通貨の動きは

日本人の場合ドル円のみ初心者は見て判断してしまう傾向があります。

次は、ドル円ユーロ円ポンド円豪ドル円トルコリラ円メキシコペソ円の5種類に分けて見ていきます。

コロナショックにおける各通貨の動き

先ほどはドル円とドルインデックスでドルの需要の高まりがドル円の上昇に寄与したと説明しましたが上記のチャートでもそれが示されています。

まずドル円、一番上の青色のラインです。

年初からのチャートですが唯一プラスで推移しているのがわかるでしょう。

他の対円の通貨ペアは総じて円高方向で推移しており、リスク回避の円高が進行しているのは間違いないといえます。

単純に通貨の強弱で見ると一番強いのが米ドルであり、株価の下落に合わせて円もいつも通り買われていたということが上記から判断ができます。

そして一番下落しているのがメキシコペソ円です。

これはエマージング通貨の一つですがコロナショックと合わせて裏側では原油価格の暴落が起きています。

そのため資源国通貨であり、原油で利益が出ているメキシコにとっては痛手となるためこのように通貨の値動きに反映されているということです。

日本人が大好きなトルコリラは12%程度の下落を見せていますが、これでも豪ドルとほぼ同じ値幅と考えると下落幅としてはなんとか落ち着いていると言ってもいいでしょう。

トルコリラは基本的に流動性が薄いため一気に市場での流動性が低下すると30%や40%という値動きが一瞬で起きることもある通貨です。

しかしこれが豪ドル円とほぼ同じ値幅というのは、トルコ中銀がトルコリラ買いの為替介入を淡々と行なっていることが背景にあるでしょう。

そのためトルコ中銀が保有している外貨準備高(為替介入時に利用される米ドルを含めた外貨保有金額)は減少しており枯渇状態になってきています。

自国通貨防衛のため各国外貨準備高で貯蓄し、何かあった場合にはドル売り自国通貨買いを行うのですが、この外貨準備がトルコでは年々減少しているということです。

ユーロ円も6%超の下落を見せており、やはり政策金利が低いと売られやすいともいえます。

しかしここで理解できるのは「流動性の厚い(取引高が世界的に多い)通貨の下落幅が小さい」ということです。

これはFXのトレーダー等していると気づきにくいことですが機関投資家やヘッジファンドが一番気にするのは「売りたいときに売れないリスク(流動性リスク)」を一番気にしています。

それはそれだけマーケットが混乱するとどこも買ってくれない状態となり現金化したくても何もできないということです。

これは外国為替の世界でも同様で、エマージング通貨と呼ばれるトルコリラ、南アフリカランドような新興国通貨でも同じリスクがあるといえます。

また流動性が枯渇するとbid-askのスプレッドが異常なくらい広がってしまい、ベストなプライスで売り買いが出来ないという自体になりかねず、その流動性リスクが上記のチャートにしっかりと現れているともいえます。

コロナショックから学ぶべきことは

ころなから学べること

最後に、現状まだ続いているコロナショックから投資家が学ぶべきことをまとめます。

1.エマージング通貨は大きく売られやすい

まず上記のチャートからわかる通りエマージング通貨の売られ方はとても大きいことは理解できたでしょう。

これは高金利通貨だからこそキャリートレード(低金利通貨をショートして高金利通貨をロングすることで金利を享受すること)の巻き戻しが起きることから、高金利通貨売り低金利通貨買いのフローが出てきます。

そして景気が悪化すると当然先進国の株が下落、そして資源価格の下落も同時に起きるため、先進国の輸出入に頼っているエマージング国は影響を受けることになり、また資源の採掘で国力を維持しているところも多いことからエマージング通貨には大きく不利な環境を迎えるということです。

2.投資家のリスク許容度が急低下すると米ドルが変われる

「有事のドル買い」という言葉がありますがこの通りです。

景気後退程度であればリスク回避の動きから円買い、スイスフラン買いの動きでドルは売られることが多い(米国の政策金利が高ければ)ですが、景気後退ではなくショックのような大きなインパクトになると円買い、米ドル買いの動きになるということです。

3.大きな経済対策から株価はあまり下落しない

これはFXに間接的に関係することで、これだけのショックが起きる最初に株価は急落をしますが、その後大規模な経済対策から実はコロナのピーク辺りから株価は徐々に上昇し始めます。

株価は6ヶ月から1年先を織り込んでいると言われる通り、経済対策のインパクトを織り込みに行っているということです。

そのためFXのトレーダーは政策金利の引き上げがないことを見越してどの通貨をロングするのかを考えないといけません。

マイナス金利の通貨はショートで組み立ててOKですが、ロングをする通貨はしっかりと見極める必要があると思います。

このようにコロナショックから学ぶべきことはたくさんあります。

リーマンショックの時を振り返るのもいい勉強になるため興味のある方は一度リーマンショックと併せてコロナショックの影響を考察し次のトレードを考えてみるといいでしょう。

この記事の寄稿者

証券アナリスト・中島 翔 (Sho Nakashima)

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。 その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。 その後は、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。 さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。 仮想通貨トレードに関しても、仮想通貨取引所コインチェックにて、トレーディング業務に従事した経験を持ち、金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 【保有資格】証券アナリスト