「仮想通貨取引所」という言葉は、すでに多くの人に馴染みのある言葉だと思います。また取引所=仮想通貨売買ができるところ、と思っているいる人が大半でしょう。もちろんその認識で合っていますが、取引所には仮想通貨売買の他にも業界にとって大事な役割があります。
今回は「仮想通貨業界にとって取引所が重要な理由」について、専業トレーダーのひろぴーが解説します。これを知ることで仮想通貨業界の構造の理解も進み、ニュースやTwitterでの情報収集も捗るようになることでしょう。
今回のゼロはじMarketGuide専門家
ラジオ日経パーソナリティ兼FX・BTCコラムニスト ひろぴー
専業トレーダー ひろぴー
2010年からFX取引をはじめ、2013年、アベノミクスの恩恵もあり、FX取引で資産を急激に増加、この年からFX最大ポータルサイトのZAIFXでの企画出演をはじめ、インタビューを受けるようになる。
2014年には、ZAIFXとYahooファイナンスのコラボレーション企画で、タレントのボビー・オロゴンさんや福田萌さんとのトレードバトルが話題となり、2016年から2019年まで、ラジオ日経のFX番組トレードパーティーでラジオパーソナリティーを務める。
現在は週5本のFXや仮想通貨ポータルサイトのコラム執筆、講演、ラジオのレギュラー番組を持ちつつ、自己資金の資産運用も実施している。
取引所とは
ひろぴー
また「取引所」という名称で親しまれてますが、日本の法律では「仮想通貨交換業者」と呼ばれていて、仮想通貨(暗号資産)の取引を行う業者は当局からの認可が必要になっています。
取引所が業界に与える各メリット
最初に述べた通り、取引所は仮想通貨を売買できることです。
しかしユーザーの他にも、仮想通貨業界にとって大きなメリットをもたらしています。
では具体的にどのようなメリットであるかを、以下3つの対象ごとに見てみましょう。
- 仮想通貨の発行元や運営団体
- 仮想通貨の保有者、トレーダー
- 国や政府
仮想通貨発行元や運営団体にとっての資金調達におけるメリット
ブロックチェーン関係のスタートアップ企業にとって取引所は、資金供給の大事なルートです。
スタートアップの多くは、世の中の課題をブロックチェーンで解決することを提案したあとに、その実現のために資金調達を行います。
資金調達の多くは、ICO(仮想通貨発行による資金調達)やIEO(取引所が審査やサポートをする資金調達)で新たにトークンを発行して、ビットコインやイーサリアムなどと交換して行われます。
また、発行した仮想通貨は全て交換せずに、スタートアップが一部を保有していることもあります。
そしてスタートアップは調達した仮想通貨を資金源として、開発や運営、マーケティングなどを行うことになります。
そこで利用するのが取引所だ
また新たに発行したトークンは価格が決まっていないため、もしそのトークンを欲しい投資家が人がいても、幾らで交換するべきなのかがわかりません。
そこでスタートアップは、取引所にその仮想通貨を上場(取扱いの開始を)させます。
それにより多くのユーザーが取引し、需要と供給により価格が付きます。
そしてスタートアップは保有していた新たな仮想通貨も法定通貨に交換し、開発費などに充てられるようになります。
ユーザーや保有者にとっての取引におけるメリット
ここでいう仮想通貨市場とは、ユーザー同士、取引所とユーザー、取引所同士で行われる仮想通貨売買のことを指します。
より多くの取引所で仮想通貨が売買されることで、流動性が生まれ価格変動幅(ボラティリティ)が抑えられ、また市場全体における価格が決まります。
流動性は仮想通貨を売買したい人の多さと、売買が成立する頻度の高さによって決まり「流動性がある・ない」や「流動性が高い・低い」と言うぞ
取引所はより多くのユーザーを集めることで、仮想通貨の流動性が低くなり、ユーザーは安心して取引ができるようになります。
逆にユーザーの少ない取引所は、流動性が高くなり、買いたい値段で約定しない、売りと買いの価格差が広いなどといった状況に、なりやすくなります。
しかしそのようなボラティリティも、いずれは抑えれるようになります。
それは安く仮想通貨を買えたユーザーが、高い取引所に送金して売ることで利益を得ようとするからです。※
そうすることで取引所の流動性が高まり、最終的には取引所間の価格差もどんどん狭くなり、他の取引所との価格差も狭くなり、市場全体における仮想通貨の価格が決まることになります。
またその他に、取引所にはカストディ(資金管理)の役割もあるぞ!
政府にとっての規制整備におけるメリット
政府にとって、仮想通貨取引所は悩みのタネと言えます。その原因は主に、マネーロンダリングに使用されてしまう可能性が高いからです。
そのような犯罪利用をなくすためには、KYC(本人確認)の義務付けやウォレットの管理体制、仮にハッキングされた場合の顧客資産の保護や被害の軽減措置などのガイドラインが必要です。
規制の整備は仮想通貨業界の発展のために必要と言えます。
日本ではJVCEAと呼ばれる事業者団体が、ガイドラインを策定し政府と掛け合っています。その結果、2020年4月には新たな仮想通貨法と言える「改正資金決済」が施行されます。
仮想通貨業界における取引所のまとめ
取引所は仮想通貨業界にとって大事な役割を担っています。今回このことを知り、仮想通貨業界に少し興味を持った方もいるのではないでしょうか?